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MTシステム

MTシステム(マハラノビス・タグチ・システムの略)はデータ解析の手段で、最近流行のAIに近い使われ方がされている手法です。AIの定義を「k個の項目あるいは変数を箱の中に与えたとき、人間の判断と同等以上の出力が得られるなら、その箱の中身をAIと呼ぶ」とするなら、AIだとも言えます。ただ、機械学習など世間一般がイメージするAIとは異なります。より難しい緻密な解析をする場合にはAIが有効です。しかし、企業での使われ方を見ると、AIほどの計算が必要か疑問に感じるところがあります。さらに不安なのは、結果に至る過程がブラックボックスなところです。
それに対して、MTシステムが示す計算手段は、難易度の高い課題ではAIより劣るかもしれませんが、
1)計算が容易で処理速度を早くできる。
2)項目の影響度を比較できる(中身が見える)ので、改善につなげやすい,調整しやすい。
といったメリットがあります。AIを導入する前に、まずMTシステムが使えないか?と検討されることをオススメします。

MTシステムのフレームワーク

MTシステムの計算手法は以下のように数種類あります。


個別の計算手順は、各種文献を参照ください。
個人的にオススメの書籍は、「入門MTシステム」(日科技連) です。

MTシステムの主な使われ方

工程内検査
 加工工程での品質保証(自工程完結)
 →後工程で検査していては遅い,コスト高
  製造プロセスの管理で保証する→検査レスに 
設備診断
 設備からの信号(振動,電力,音など)を収集して異常判定
 →加工機におけるツールの破損や寿命予測
 →設備メンテナンス時期の発信
画像検査
 正常な製品をパターン認識して、異常判定

MT法の計算手順

概要ばかりではイメージしにくいと思うので、代表的なMT法について計算手順を示します。
MT法の考え方を説明するときに、よくひきあいにだされるのがトルストイの有名な小説「アンナ・カレーニナ」の冒頭の一行
「幸福な家庭は皆同じようだが、不幸な家庭はそれぞれの事情がさまざまである」です。
いろいろなケースの不具合を予測することは困難です。DRやFMEAなどで予測は試みてはいるものの、多種多様なトラブルを完璧に予測するのは不可能といえるでしょう。そこで、不具合を予想するのではなく、正常な状態のパターンを研究することで異常を検知する、という考え方です。

手順は、
1)正常なデータで基準空間を作成する。
2)相関行列→逆行列を求め、それを使ってマハラノビスの距離を求める。
3)比較したいデータとの距離を計算する。
  正常空間に対する距離の近さで(閾値を決めて)判別する。
4)シュミットによって、取り上げた項目が有効か否かを選別する。

MT法は、相関関係を重視した評価方法といえます。
下図に示すように、各項目(図ではA.身長とB.体重の2項目)の管理幅に入っているかどうかという判断では、赤丸のデータは規格内になってしまいます。AとBの相関関係で基準空間(図の黄色楕円部)を作り、それに対する距離で比較する、とすれば赤丸のデータを判別できるというものです。図はわかりやすく2個(A,B)の項目で図示していますが、この項目数が数十個の多次元空間で同様の評価を行うのがMT法ということです。

具体的な手順を以下に示します。

MT法以外の計算方法については、市販の書籍を参照してください。

これまで、どのような事例で適用されたか?
品質工学研究発表大会で発表されたタイトルの一覧を以下からダウンロードできます。参考にしてください。

MTシステムの各計算法の特徴を、事例を使って紹介した投稿もあります。
MTシステムの農業での適用事例:干し柿の乾燥条件の評価

直交表を使って,各項目の有効度を評価するのがタグチ考案の方法といえます。これによって、項目の影響度合いが見える化されます。そこがAIと違う、技術の視える化ができるメリットだともいえます。